孕性温存療法の患者紹介について

孕性温存療法への
適切な患者紹介のために

妊孕性温存療法をご紹介いただく際の目安や紹介方法、滋賀医科大学医学部附属病院 がん妊孕外来の受け入れ体制をご案内します。

妊孕性温存療法の患者紹介について

がん患者さんが妊孕性温存を希望された場合、治療開始前に妊孕性への影響を評価し、適切な時期に情報提供や紹介を行うことが重要です。

がん治療による妊孕性への影響は、治療内容や患者さんの年齢などによって異なります。

治療による不妊リスク評価には、ASCO(米国臨床腫瘍学会)2013年ガイドラインに示された、化学療法および放射線療法による性腺毒性リスク分類などを参考にします。
(J Clin Oncol. 2013, 31(19):2500)

患者さんの不妊リスクが中〜高リスクである場合、または低〜無リスクであっても妊孕性温存について個別の情報提供を希望される場合には、妊孕性温存療法実施施設への紹介をご検討ください。

近年では、リスク分類に掲載されていない薬剤(特に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など)や治療レジメンも増えており、妊孕性への影響評価が難しい場合も少なくありません。

そのような場合には、妊孕性温存療法実施施設において、がん治療が妊孕性へ与える影響について評価を行います。

妊孕性温存療法実施施設へ患者さんをご紹介いただく際は、ご施設の紹介状に加えて、JSFP-Oncofertility Consortium JAPAN(JSFP-OCJpn)の情報提供用紙もご利用いただけます。

なお、JSFP-OCJpnの情報提供用紙のみでのご紹介も可能です。

滋賀医科大学医学部附属病院 がん妊孕外来について

滋賀医科大学医学部附属病院女性診療科では、「がんや自己免疫疾患などの患者さんの妊孕性温存外来」(がん妊孕外来)を設置しています。

平日であればいつでも受診いただける体制としており、患者支援センターなどを通じてご紹介いただければ、可能な限り迅速に対応いたします。

化学療法・放射線療法による性腺毒性リスク分類

がん治療に用いられる化学療法や放射線療法は、治療内容によって造精機能へ影響を及ぼす可能性があります。

以下は、ASCO2013ガイドラインに基づく性腺毒性リスク分類です。

リスク 治療プロトコール 患者および投与量などの因子 使用対象疾患
高リスク
(治療後、一般的に無精子症が遷延、永続する)
アルキル化剤*+全身照射 白血病への造血幹細胞移植の前処置、リンパ腫、骨髄腫、ユーイング肉腫、神経細胞腫
アルキル化剤*+骨盤または精巣照射 肉腫、精巣腫瘍
シクロホスファミド総量 7.5g/m2 多くのがん種と造血幹細胞移植の前処置
プロカルバジンを含むレジメン MOPP**:>3サイクル
BEACOPP:>6サイクル
ホジキンリンパ腫
テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射 脳腫瘍
精巣照射 >2.5Gy(成人男性)
>15Gy(小児)
清掃腫瘍、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、肉腫、胚細胞腫瘍
全身照射 造血幹細胞移植
頭蓋照射 >40Gy 脳腫瘍
中間リスク
(治療後、無精子症が遷延、永続することがある)
重金属を含むレジメン
BEP
シスプラチン総量
カルボプラチン総量
2-4サイクル
>400mg/m2
>2g/m2
精巣腫瘍、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、肉腫、胚細胞腫瘍
散乱線による清掃への放射線照射 1-6Gy ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫
低リスク
(一時的な造精機能低下)
アルキル化剤*以外の薬剤を含むレジメン ABVD、CHOP、COP、白血病に対する多剤療法など ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病
シクロホスファミドを含む乳がんに対するレジメン CMF、CEF、 CAFなど(<30歳) 乳がん
アントラサイクリン系+シタラビン 急性骨髄性白血病
超低リスク、またはリスクなし
(月経に影響しない)
ビンクリスチンを用いた多剤療法 白血病、リンパ腫、乳がん、肺がん
放射性ヨウ素 甲状腺がん
不明 モノクローナル抗体(セツキシマブ、トラスツズマブ) 大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブ、イマチニブ) 非小細胞肺がん、膵臓がん、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍
高リスク(治療後、一般的に無精子症が遷延、永続する)
アルキル化剤*+全身照射
対象疾患:白血病への造血幹細胞移植の前処置、リンパ腫、骨髄腫、ユーイング肉腫、神経細胞腫
アルキル化剤*+骨盤または精巣照射
対象疾患:肉腫、精巣腫瘍
シクロホスファミド総量
投与量:7.5g/m2
対象疾患:多くのがん種と造血幹細胞移植の前処置
プロカルバジンを含むレジメン
投与量:MOPP**:>3サイクル/BEACOPP:>6サイクル
対象疾患:ホジキンリンパ腫
テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射
対象疾患:脳腫瘍
精巣照射
投与量:>2.5Gy(成人男性)/>15Gy(小児)
対象疾患:清掃腫瘍、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、肉腫、胚細胞腫瘍
全身照射
対象疾患:造血幹細胞移植
頭蓋照射
投与量:>40Gy
対象疾患:脳腫瘍
中間リスク(治療後、無精子症が遷延、永続することがある)
重金属を含むレジメン(BEP/シスプラチン総量/カルボプラチン総量)
投与量:2-4サイクル/>400mg/m2/>2g/m2
対象疾患:精巣腫瘍、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、肉腫、胚細胞腫瘍
散乱線による清掃への放射線照射
投与量:1-6Gy
対象疾患:ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫
低リスク(一時的な造精機能低下)
アルキル化剤*以外の薬剤を含むレジメン
投与量:ABVD、CHOP、COP、白血病に対する多剤療法など
対象疾患:ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病
シクロホスファミドを含む乳がんに対するレジメン
投与量:CMF、CEF、CAFなど(30歳未満)
対象疾患:乳がん
アントラサイクリン系+シタラビン
対象疾患:急性骨髄性白血病
超低リスク、またはリスクなし(月経に影響しない)
ビンクリスチンを用いた多剤療法
対象疾患:白血病、リンパ腫、乳がん、肺がん
放射性ヨウ素
対象疾患:甲状腺がん
不明
モノクローナル抗体(セツキシマブ、トラスツズマブ)
対象疾患:大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブ、イマチニブ)
対象疾患:非小細胞肺がん、膵臓がん、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍
注釈

* ブスルファン、カルムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、lomustine(本邦未承認)、メルファラン、プロカルバジンなど

** MOPP療法に使用されているmechlorethamineは、本邦未承認

リスク 治療プロトコール 患者および投与量などの因子 使用対象疾患
高リスク
(>70%の女性が治療後に無月経となる)
アルキル化剤*+全身照射 白血病への造血幹細胞移植の前処置、リンパ腫、骨髄腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、絨毛がん
アルキル化剤*+骨盤照射 肉腫、卵巣がん
シクロホスファミド総量 5g/m2(>40歳)
7.5/m2(<20歳)
多くのがん種、乳がん、非ホジキンリンパ腫、造血幹細胞移植の前処置
プロカルバジンを含むレジメン MOPP**:>3サイクル
BEACOPP:>6サイクル
ホジキンリンパ腫
テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射 脳腫瘍
全腹部あるいは骨盤照射 >6Gy(成人女性)
>10Gy(思春期後)
>15Gy(思春期前)
ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、肉腫、ホジキンリンパ腫、卵巣がん
全身照射 造血幹細胞移植
頭蓋照射 >40Gy 脳腫瘍
中間リスク
(30〜70%の女性が治療後に無月経となる)
シクロホスファミド総量 5g/m2(30〜40歳) 多くのがん種、乳がん、非ホジキンリンパ腫、造血幹細胞移植の前処置
乳がんに対するAC療法 ×4サイクル+パクリタキセル/ドセタキセル(<40歳) 乳がん
モノクローナル抗体
(ベバシズマブ***など)
大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
FOLFOX4 大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
シスプラチンを含むレジメン 子宮頸がん
腹部/骨盤照射 10-15Gy(思春期前)
5-10Gy(思春期後)
ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、脊髄腫瘍、脳腫瘍、急性リンパ性白血病または非ホジキンリンパ腫再発
低リスク
(<30%の女性が治療後に無月経となる)
アルキル化剤*以外や低レベルのアルキル化剤を含むレジメン ABVD、CHOP、COP、白血病に対する多剤療法など ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病
精巣に対する放射線照射 0.2-0.7Gy 精巣腫瘍
アントラサイクリン系+シタラビン 急性骨髄性白血病
超低リスク、またはリスクなし
(影響なし)
ビンクリスチンを用いた多剤療法 白血病、リンパ腫、乳がん
放射性ヨウ素 甲状腺がん
散乱による精巣への放射線照射 <0.2Gy 多くのがん種
不明 モノクローナル抗体(セツキシマブ、トラスツズマブなど) 大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん
チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブ、イマチニブなど) 非小細胞肺がん、膵臓がん、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍
高リスク(>70%の女性が治療後に無月経となる)
アルキル化剤*+全身照射
対象疾患:白血病への造血幹細胞移植の前処置、リンパ腫、骨髄腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、絨毛がん
アルキル化剤*+骨盤照射
対象疾患:肉腫、卵巣がん
シクロホスファミド総量
投与量:5g/m2(40歳超)/7.5/m2(20歳未満)
対象疾患:多くのがん種、乳がん、非ホジキンリンパ腫、造血幹細胞移植の前処置
プロカルバジンを含むレジメン
投与量:MOPP**:>3サイクル/BEACOPP:>6サイクル
対象疾患:ホジキンリンパ腫
テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射
対象疾患:脳腫瘍
全腹部あるいは骨盤照射
投与量:>6Gy(成人女性)/>10Gy(思春期後)/>15Gy(思春期前)
対象疾患:ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、肉腫、ホジキンリンパ腫、卵巣がん
全身照射
対象疾患:造血幹細胞移植
頭蓋照射
投与量:>40Gy
対象疾患:脳腫瘍
中間リスク(30〜70%の女性が治療後に無月経となる)
シクロホスファミド総量
投与量:5g/m2(30〜40歳)
対象疾患:多くのがん種、乳がん、非ホジキンリンパ腫、造血幹細胞移植の前処置
乳がんに対するAC療法
投与量:×4サイクル+パクリタキセル/ドセタキセル(40歳未満)
対象疾患:乳がん
モノクローナル抗体(ベバシズマブ***など)
対象疾患:大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
FOLFOX4
対象疾患:大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん、乳がん
シスプラチンを含むレジメン
対象疾患:子宮頸がん
腹部/骨盤照射
投与量:10-15Gy(思春期前)/5-10Gy(思春期後)
対象疾患:ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、脊髄腫瘍、脳腫瘍、急性リンパ性白血病または非ホジキンリンパ腫再発
低リスク(30%未満の女性が治療後に無月経となる)
アルキル化剤*以外や低レベルのアルキル化剤を含むレジメン
投与量:ABVD、CHOP、COP、白血病に対する多剤療法など
対象疾患:ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病
精巣に対する放射線照射
投与量:0.2-0.7Gy
対象疾患:精巣腫瘍
アントラサイクリン系+シタラビン
対象疾患:急性骨髄性白血病
超低リスク、またはリスクなし(影響なし)
ビンクリスチンを用いた多剤療法
対象疾患:白血病、リンパ腫、乳がん
放射性ヨウ素
対象疾患:甲状腺がん
散乱による精巣への放射線照射
投与量:0.2Gy未満
対象疾患:多くのがん種
不明
モノクローナル抗体(セツキシマブ、トラスツズマブなど)
対象疾患:大腸がん、非小細胞肺がん、頭蓋部がん
チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブ、イマチニブなど)
対象疾患:非小細胞肺がん、膵臓がん、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍
注釈

* ブスルファン、カルムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、lomustine(本邦未承認)、メルファラン、プロカルバジンなど

** MOPP療法に使用されている mechlorethamine は、本邦未承認

*** 2013年のASCOガイドライン後に様々なデータが蓄積されており、「ベバシズマブが中間リスクを有する性腺毒性のある薬剤である」との判断には十分注意が必要です。

OF-Net Shigaの会則・運営体制

OF-Net Shigaでは、滋賀県内における妊孕性温存療法の普及および適切な医療連携を推進するため、ネットワークの運営に関する会則を定めています。

代表 村上 節 滋賀医大 産科学婦人科学講座 教授
幹事長 辻 俊一郎 滋賀医大 産科学婦人科学講座 准教授
幹事 坂井 幸子 滋賀医大 外科学講座(小児) 助教
熊谷 康佑 滋賀医大 整形外科学講座 特任講師
坂本 謙一 滋賀医大 小児科学講座 助教
小林 憲一 滋賀医大 泌尿器科学講座 助教
竹林 明枝 滋賀医大 産科学婦人科学講座 学内講師
花田 哲郎 滋賀医大 産科学婦人科学講座 助教
監事 多賀 崇 滋賀医大 小児科学講座 准教授
アドバイザー 菊井 津多子 滋賀県がん患者団体連絡協議会 会長
角野 文彦 滋賀県 健康医療福祉部 理事
田村 奈那子 滋賀県 健康寿命推進課
田久保 康隆 市立長浜病院 呼吸器外科 責任部長
村田 誠 滋賀医大 血液内科 教授
醍醐 弥太郎 滋賀医大 臨床腫瘍学講座 教授
代表
村上 節
滋賀医大 産科学婦人科学講座 教授
幹事長
辻 俊一郎
滋賀医大 産科学婦人科学講座 准教授
幹事
坂井 幸子
滋賀医大 外科学講座(小児) 助教
熊谷 康佑
滋賀医大 整形外科学講座 特任講師
坂本 謙一
滋賀医大 小児科学講座 助教
小林 憲一
滋賀医大 泌尿器科学講座 助教
竹林 明枝
滋賀医大 産科学婦人科学講座 学内講師
花田 哲郎
滋賀医大 産科学婦人科学講座 助教
監事
多賀 崇
滋賀医大 小児科学講座 准教授
アドバイザー
菊井 津多子
滋賀県がん患者団体連絡協議会 会長
角野 文彦
滋賀県 健康医療福祉部 理事
田村 奈那子
滋賀県 健康寿命推進課
田久保 康隆
市立長浜病院 呼吸器外科 責任部長
村田 誠
滋賀医大 血液内科 教授
醍醐 弥太郎
滋賀医大 臨床腫瘍学講座 教授

患者さん向けのご案内

OF-Net Shigaの概要や妊孕性温存療法について患者さん向けにご案内しています。
患者さんへの情報提供やご案内の際にご活用ください。